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行こか戻ろかイギリス生活

行こか戻ろかイギリス生活

Mercedes Ruiz


2004年10月2日

Mercedes Luiz 公演パンフレット 今日はメルセデス・ルイスを観にQueen Elizabeth Hallに行く。1ヶ月くらい前から予約していたので、前から5列目の真中という結構良い席で楽しみだ。

メルセデス・ルイスは私の金曜日のヌリア先生と親交があるのか、ヘレスでのサマーコースでも中級者にブレリアを教えていたし、昨日は私達のスクールでワークショップもやっていた。彼女は大変小柄で、地味なジャージ姿で教えていると、うっかり生徒に紛れてしまいその姿を見つけるのが難しい程。会場に着くと、スクールでの再三の告知もあって同じスクールの生徒はもとより、初心者から上級者・プロまで、ロンドンのフラメンコ関係の場所で見かける人がかなり来ているようだ。こういういわゆる社交の場で、顔見知りに笑顔で挨拶、軽く立ち話というのは、楽しいが、結構面倒くさかったりする。そうこうしているうちにヌリア先生も娘を伴って登場。招待席と思われる2列目センターに座って各方面に笑顔を送っている。やっぱりこうして見るとスター、結構綺麗じゃんなどと思う。

私達生徒は、みんなそれぞれの好みで一番良いと思われる席を予約しており、一人ずつあちこちバラバラに座っている。ざっと会場を見渡して、単独で座っている女性はそのほとんどが練習生だ。そう、ここも大切な勉強の場、友人と隣同士に座って楽しく観る余裕はないのである。

今回の公演では、ダンスカンパニーといっても踊り手はメルセデス一人。一人で全てを踊りきろうという姿勢に、公演を見る前からすでに感動。その演目は期待通りトラディショナルな内容で、タイトルは「Dijujos en el Aire / Figures in the Air」。
メニューは、
1.Zapateado (Mercedes)
2. Music
3. Tangos (Mercedes)
4. Sorea por Buleria (Guitar)
5. Dibujos en el Aire – Alegria (Mercedes)
6. Music
7. Siguiriya (Mercedez)
8. Fin de Fiesta (Buleria)

インターミッションなし一本勝負と、かなり男前である。その他のカンパニーのメンバーは、カンテ(男二人、女性一人)- Mercedes Cortes, Londro, El Pulga、ギターがSantiago Lara、カホン - Raul Rivas “El rata”。

開始前の挨拶では、メルセデスがスペインで今注目の若手新進バイラオーラである事が紹介され、この公演がデビューステージである事などの説明があった。(多分イギリスデビューという意味だと思う)
踊りが始まると、普段の普通のお姉さん風の印象から一転して、まずその表情の豊かさに驚かされる。元々鼻が高くて彫りが深いのだろうが、ライトを浴びて正面を向くと、鼻筋くっきり、その横の両目のあたりは真っ黒い穴のように見え、なんともエキゾチックだ。顔を上にあげて予想外にセクシーな表情を見せる。目が離せない。どんどん引き込まれていく。

サパテアードでは、茶色の丈の短い上着にズボンという凛々しい姿で登場。パルマと軽いギターだけの伴奏での足さばきはきれいだったが、ちょっと緊張していたかも。2曲目のタンゴは真っ赤な衣装で登場。身長の低さを感じさせない存在感がすばらしい。それから正面を向いたときの正しさ。何が正しいのか言葉にはできないが、顔といい腕といい、全てが正しいといった感じだ。ターンも美しいが、後、キレが素晴らしい。強い所は強く、やわらかい所の手の動きは癖も無くフラメンコのお手本のようだった。

2曲目のアレグリアは、あの裾がゾロゾロする衣装で登場。尾を見事にさばいていたが、テールの向きを変えるのにスカートの中で一体何回蹴っているのかと考えると、素晴らしいの一言である。今までホアキン・グリロの公演とセビリアのロスガリョスでこのタイプのドレスを着て踊っているのを見た事があるが、メルセデスが一番上手だったと思う。タンゴもそうだったが、このアレグリアスでも古典的な曲種だが、リズムの切り方が若手らしくところどころ斬新で、変化があってそれも良かった。

最後はシギリージャ。ここまで、短いギターソロやカンテソロを挟んで、前の曲を踊り終えて10分後には着替えて次の曲の為にステージに姿を現している。ものすごいエネルギーだ。こちらも息つく暇が無い。シギリージャの事はよくわからないが、これも素晴らしかった。最後はおきまりのブレリアで、暖かく盛り上がって終了。深々とお辞儀をするメルセデスに大きな拍手が巻き起こり、もちろん、お世辞ではなく本物のスタンディングオベーションだ。

見終わっての感想は、とにかく正しいフラメンコを観たという感じか。基本に忠実といっては、メルセデス様に向かって失礼だが、崩れたところが一つも無い完璧なステージだった。後、彼女の醸し出すあの独特の(陳腐な表現だが)ひたむきな情熱は一見といわず、何回でも観に行く価値がある。

公演の後は、他のクラスメートなどがタパスバーに繰り出しているのを横目に、私達日本人3人はまたもや中華料理屋へ。「どんな洋モノを見た後でも、中華を食べると瞬く間に完璧なアジア人に戻るね」などと話し合いながら、本日も楽しい一日が終わった。

今後のテーマ、「キレ」に決定。




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